2013年2月28日木曜日

3月10日 ミュージック・コンクレート/電子音楽オ―ディション 再現コンサート(レクチャー付)





写真は、「ミュージック・コンクレート/電子音楽オーディション」の会場写真(撮影:大辻清司、会場構成:山口勝弘)1956/2012年 武蔵野美術大学 美術館・図書館蔵 です。

 

310日に、ミュージック・コンクレートの再現コンサートを、鎌倉別館で開催します。

 

〈ミュージック・コンクレート/電子音楽オーディション〉再現コンサート(レクチャー付)

◆日時:2013310日(日)午後230分-午後4
◆会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館 展示室
◆講師:川崎弘二(電子音楽研究)
◆音響:有馬純寿

※申込不要、無料。ただし展覧会の観覧券が必要です。

 

 

実験工房にまつわるコトバ解説>> Ⅱ.「実験工房の時代」 1951-1957 展示より

〈ミュージック・コンクレート/電子音楽オーディション〉

実験工房の主催、現代芸術研究所の協賛により、芥川也寸志、柴田南雄、黛敏郎が招かれ、それまでにラジオ局から放送されたテープ音楽を中心とするコンサートが開催された。プログラムの巻頭には現代芸術研究所を主宰する岡本太郎が寄稿しており、同研究所の活動がこのコンサートの実現に大きな貢献を果たしたものと考えられる。林光が「日本最初の、演奏家のいらない音楽のコンサートであったというだけでなく、これらの方向が現代音楽一つの潮流として動かしがたいものとして存在するということを、はっきりと証明した」と述べているように、このコンサートは実験工房の活動の中でも特に影響力の強いものであった。会場にはロープによる空間構成が山口勝弘により行われ、客席に向かっては「拷問部屋みたいなサーチライト」(安部公房)が照射された。

 
195624日 山葉ホール
〔上演作品〕
芥川也寸志〈マイクロフォンのための音楽〉
黛敏郎〈ミュージック・コンクレートのための作品X-Y-Z
武満徹〈ルリエフ・スタティク〉
鈴木博義〈試験飛行家W-S氏の眼の冒険〉
柴田南雄〈立体放送のためのミュージック・コンクレート〉
黛敏郎〈電子音楽 習作Ⅰ〉

 

2013年2月7日木曜日

私の音楽は、実験工房の体験なくしては、ありえなかった。 ―武満徹




<実験工房>は、いまでこそそれに類したグループ活動もさほど珍しくもないが、結成の当時は、一般には、かなり奇異なものに映ったようだ。日本の文化状況は閉鎖的なものだったし、ジャンルを超えた結びつきに、誰しもが疑わしげな、それでいて好奇に充ちた目を向けていた。私たちの結束を支えた大きな力は、言うまでもなく、詩人瀧口修造の存在だった。海藤日出男氏の発案が契機となって<実験工房>は生まれたが、実際の表現活動以上に、瀧口氏から与えられる創造の啓示に、私たちは一様に精神を開き、その結束も深めたのだった。いまはそれがとても懐かしいものとして思いかえされる。

 私の音楽は、<実験工房>の体験なくしては、ありえなかった。真に精神の師匠(パトロン)と呼べる存在に出会えたこと、そして、互いに切磋琢磨しあえる友たちに巡り合えたことの幸運を思わずにはいられない。

 

                  『第11回オマージュ瀧口修造 実験工房と瀧口修造』
                   (199178-31日、佐谷画廊)カタログより引用





 

学芸員から>>《遮られない休息―瀧口修造の詩による》など、貴重な直筆の楽譜も展示しています。
 




 
 

写真を撮影したのは北代省三。
写真ににうつっているのは、左から谷川俊太郎、秋山邦晴、武満徹、武満浅香。
 
「鎌倉散歩」は、「作曲家訪問 武満徹」(文:谷川俊太郎、『シンフォニー』19576月号)のために撮影されました。
 当時、武満徹・浅香夫妻が住んでいた鎌倉を、谷川俊太郎、秋山邦晴、北代省三が訪ね、5人で段葛、鶴岡八幡宮、神奈川県立近代美術館、江ノ島をめぐり、武満の自宅へと
向かいました。
 
 
 この作品は鎌倉館の1階でみることができます。
 
                                       北代省三「鎌倉散歩」より 1957年 デジタル上映
                                       川崎市岡本太郎美術館蔵 映像制作:Todoroki_lob


 
 

APN




上の写真は、構成:山口勝弘/撮影:大辻清司「APN」(『アサヒグラフ』1953121日号)のための構成 1953年 です。図録の表紙にもなっています。

本展で、APNは、オリジナルのゼラチンシルバープリントと掲載誌が全部で61点展示されています。

 

学芸員から>> APNは、展覧会図録にも所収していない作品も多数展示しています。

 

下の写真は、構成:山口勝弘/撮影:大辻清司「APN」(『アサヒグラフ』195317日号)のための構成 1953年 です。
 
 
 
 
 


実験工房にまつわるコトバ解説>> Ⅱ.「実験工房の時代 1951-1957」展示より

APN (あぷん)

 Asahi Picture News3つの頭文字をあしらったオブジェを造形作家が構成し、これを写真に撮り、週刊グラフ雑誌の誌面上でコラム欄のタイトル・カットとして毎号週替わりに登場させる―朝日新聞社発行の『アサヒグラフ』で1953年の年頭から展開していくこの新鮮な企画は、当時の同誌編集長・伊沢紀(いざわ・ただす 劇作家・飯沢匡)に相談を持ちかけられた新進美術家・北代省三の発案から始まった。当初、オブジェ制作は、実験工房の北代、山口勝弘、駒井哲郎に斎藤義重を加えた4名が担当、撮影は前衛美術に造詣の深い写真家・大辻清司が行うことになり、のちに勅使河原蒼風、長谷川三郎、浜田浜雄がオブジェ制作の担当に加わった。翌542月まで、全55回にわたって続いた。大辻は53年、実験工房に参加する。

2013年2月6日水曜日

映画『銀輪』




実験工房展の第2会場 鎌倉別館では、映画『銀輪』を上映しています。

写真は、映画『銀輪』のセットです。

 

学芸員から> カラーの特殊撮影がみどころ。ハンドルや車輪が飛んでいるシーンが面白いです。

 

 

実験工房にまつわるコトバ解説>> Ⅱ.「実験工房の時代 1951-1957より

映画『銀輪』

1959年 新理研映画製作

監督:松本俊夫/協力:矢部正男、樋口源一郎/

企画:日本自転車工業会/脚本:松本俊夫、北代省三、山口勝弘/

撮影:荒木秀三郎/美術:北代省三、山口勝弘/

音楽:武満徹、鈴木博義/特殊撮影:円谷英二

 

*本展で上映するDVDは、35㎜オリジナル・ネガより、2009年に松本俊夫監督の監修によりデジタル復元を行い、三色分解白黒ネガに焼き付けたのち、光学合成したプリントより複製したものである。

 

新理研映画に在籍していた松本俊夫(1932-)と出会った北代省三、山口勝弘は、当時松本が企画した日本自転車工業会PR映画『銀輪』の制作にシナリオ執筆の段階から参加する。少年の夢の中に憧れの自転車の世界が繰り広げられる、という設定に基づくこのカラー作品で、北代、山口は絵コンテ、美術を担当、なだらかに地平線が広がる幻想風景や、自転車のパーツが空中を浮遊し運動を繰り広げるシーンなど、随所に彼らの造形作品に通じる感覚がちりばめられた。特殊撮影は円谷英二。サウンドは武満徹、鈴木博義による鳥の鳴き声を素材にしたミュジック・コンクレートが使われた。長く所在不明となっていた本作品は、海外向けに再編集されたヴァージョンのネガが2005年に再発見され、発色を補正したデジタル復元版が2009年に作成された。


実験工房展の展覧会図録





写真は実験工房展の図録の表紙です。

 

目次|

実験工房―芽生えと兆し [水沢勉]

[再録 ]実験工房と1950年代 [ヤシャ・ライハート]

実験工房の音楽活動 [石田一志]

実験工房―世界の舞台へ [手塚美和子]

影像から/影像へ―初期実験工房の探究 [大日方欣一]

実験工房―舞台とパフォーマンス [西澤晴美]

 
第Ⅰ章 前夜

第Ⅱ章 「実験工房」の時代 1951-1957

第Ⅲ章 1960年代へ

 
激動の中の美術雑誌、そしてバレエ『生きる悦び』への助走 [杉野秀樹]

実験工房前夜―日米通信社時代の瀧口修造 [朝木由香]

実験工房時代の駒井哲郎 [石井幸彦]

「実験工房」のかたち―北代省三を中心として [佐藤玲子]

「実験工房」誕生の背景としての世田谷―新作曲派協会からの展開 [矢野進]

実験工房の電子音楽 [川崎弘二]

インターメディアとしての運動体―1960年代における実験工房について [平野明彦]

実験の精神が語るもの―実験工房、その後を個々の活動から探る [麻生恵子]

 

実験工房メンバーによる座談会

[出席者:今井直次、福島和夫、山口勝弘、湯浅譲二]

[聞き手:那須孝幸/構成・編集:那須孝幸、松原知子]

 

実験工房 略年譜

実験工房メンバー略歴

実験工房時代の人物関係図

プログラム掲載文一覧

主要文献リスト

出品リスト

 

 

図録は、鎌倉館のミュージアムショップで販売しています(2,200円)。

通信販売をご希望の方は、葉山館のミュージアムショップ(tel:046-877-5630)でお受けしています。